道心利行御和讃の解説 3
2、山河自然(さんがしぜん)の厳しさと
恩恵(めぐみ)に而今(いま)を生かされて
利他(りた)の功徳(くどく)を積む人の
花の笑顔(えがお)ぞ美しき
あなたと共(とも)に 伝えあう
正しき法(のり)灯火(ともしび)を
6月に巡回で足を延ばして訪れた礼文島では、海岸付近でも珍しい高山植物がみられます。高山植物は、環境の過酷な標高の高い山で見られる植物ですが、それが、高緯度にある礼文島では、山に登らなくても普通に見られるのです。それは、ただ単に緯度が高いというだけでなく、季節風が吹き抜ける厳しい環境である証拠でもあります。特に、礼文島固有の美しいクリーム色の花を咲かせるレブンアツモリソウ、氷河時代の生き残りともいわれるレブンウスユキソウは島の宝です。そうした、厳しい環境の中で美しい花を咲かせる高山植物、まさに、「花の笑顔ぞ美しき」という言葉が実感できる風景です。人間も齢を重ね、数々の人生の荒波を乗り越えると、それが美しい表情に現れてきます。苦難を乗り越えてきた人は、他人への心遣いが出来る人間になれますし、その経験により強い心を育んでいます。利他行を実行できる心が備わっている人と言えるでしょう。
昨年、東日本大震災の被災地へ真っ先に阪神大震災を体験した人が支援の手を差し伸べてくれました。津波で被災した寺院の僧侶方が法衣や足袋が無くて困っていると聞いて必要な物を真っ先に取り揃えて送ったのは兵庫県の僧侶の方です。非常時に効果的な支援を行うには、正しい情報を得るのが大事です。大震災の時は、僧侶のネットワークが有効で、支援の輪を広げるのに役立ちました。そして、今も必要な人や場所に必要な支援が届くようにその輪を広げる活動が行われています。ひとつひとつの灯し火は小さくても、その数が増えていけば、世の中を、そして、人の心を明るく照らす光となるでしょう。